複雑さに惑わされるな!
読んで欲しい人
生産性向上、利益増加のため…制約理論を深く学びたい人
特に、小売・アパレル・食品業界の方
「アジャイルや制約理論は知っているが、自分の業界・会社では使えない」と思っている人
制約理論に興味はあるが、自社にどう取り入れるべきか思いつかない人
読んで得られること
制約理論に対する…より深い理解
アジャイルや制約理論など…いままでと違った考え方を取り入れる時に重要なマインドセットやコツ
制約理論で有名なゴールドラット博士の「ザ・ゴール」シリーズの第5弾です。
完全に「ビジネス小説」として描かれた第一弾と比べると、ゴールドラット博士と心理学者の娘との会話という形で描かれているものの…本物のレポート(=事例)がいくつも組み込まれ、情報量の濃い一冊になっています。
本書の紹介文に出てくる「収録されている事例」がすごすぎるのと「ザ・チョイス」というタイトルから…「ものすごい効果を出す決断ができる…魔法の秘訣」でも書かれているような気がしてしまいますが、本書で語っているのは「選択の自由」です。それは
人は障害を他人の責任にしたがる
大きな改善方法などない…と期待値を下げたがる
などの特性を理解した上で、
人は本来善良である(=障害の原因は人とは別の所にあるはず)
どんな課題も大きく改善できる方法がある(=と思えば改善を続けられる)
と信じることの大切さを説いています。「人道的にそうあるべき」と言っているのではなく…「そう考えないと、本当の原因にたどり着けない」と…ハードサイエンスの研究で必要なアプローチとして説明しています。
日本のアジャイル界で有名な平鍋さんと天野さんの「プロジェクトファシリテーション - 価値と原則編」にある、「Problem vs Us」の図が…私はとても大好きなんですが、これらも「人道的にそうあるべき」ではなく、その方が本当の原因にたどり着く近道(しかも精神衛生上も素晴らしい!)ってことなんだと思います。
そういえばゴールドラット博士は物理学者、スクラムのザザーランド博士は化学者でした。スクラムガイドには5つの価値基準が記されています。
確約:Commitment
勇気:Courage
集中:Focus
公開:Openness
尊敬:Respect
これらも…人道的にそうあるべき…というよりは、ハードサイエンスの研究に必要な姿勢なのかもしれません。
ゴールドラット博士の成功事例には、
今までは、未来の予測精度を高める努力をして仕事をしてきた
ことに対して、
予測は当たらないことを認める
ロットを小さくして、デリバリー回数を増やす
フィードバックを受けて調整する
といった対策で、劇的な効果を上げているケースが何度も出てきます。
これはスクラムの小さな仕事を短いスプリントでデリバリーしてフィードバックループを回すやりかたにとても近いです。
サザーランド博士は、スクラムを考案にするにあたり、大野耐一さんの「トヨタ生産方式」を参考にしたと語っていますが…ゴールドラット博士も大野耐一さんを尊敬し「トヨタ生産方式」の影響を強く受けたそうです。関連する文献を読むことで、スクラムの理解が更に深まるのでオススメです。
本書はオーディオブックで聞くのもオススメです。